ばねに関するトラブルが起こる理由とは?
様々な製品を活用している中で、ばねが伸びきってしまったなど、ばねに関するトラブルでお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、こういった部品部分がトラブルを起こすことで、消費者からの対応に追われている製造業の方もいらっしゃるかと思います。
そこで、本コラムではばねで良く起こるトラブルと、トラブルを起こさないために発注時に気を付けるポイントをご紹介します。
1.ばねでよく起こるトラブル
ばねで起こるトラブルですが、大きく分けて「へたり」「破損」「絶縁不良」の3つが主なトラブルとなっております。
へたり
へたりとは、ばねが元の形に戻らなくなってしまい、完成したばかりのときと同じような働きができなくなってしまう現象のことです。
例えば、身近な例として掃除機のコンセントのコードが挙げられます。
掃除機を収納する際にコードを本体に収納することができる掃除機を使ったことがある方なら分かるかもしれませんが、長く使っているとコードを巻き取る速度が遅くなっていたり、コードを完全に巻き取ることができないといった症状がみられることがあります。
これは、コードの巻き取りにばねが使われており、そのばねが長年の使用により形が変形してしまったことが原因なのです。
この変形が「へたり」であり、専門用語では「永久変形」や「塑性変形」と呼ばれています。
破損
破損とは、言葉の通りばねが壊れてしまう現象のことです。
壊れ方は、ばねの種類や破損原因にもよりますが、「ヒビ割れ」「断裂」「折損」「原型を留めない大きな変形」などが挙げられます。
普段の生活ではばねが破損する場面はあまり見ないかもしれませんが、危険な例だとバイクのサスペンションとして使われていたばねが折損するという事故が起きています。
走行中に発生してしまったら大事故にも繋がりかねない危険なトラブルです。
絶縁不良
絶縁不良とは、電気を通しにくく作られたばねの絶縁性(電気を通さない性質)が弱まってしまう現象のことです。
電子機器の中で発生した静電気がばねを通して他の電子回路に影響を及ぼさないように、電気を通さない絶縁性の高いばねが用いられる場合があります。
しかし、絶縁性が弱まった結果、ショートや接続不良、危険なケースでは発火などの原因となりかねるトラブルです。
今回はその中でも、特注品の持つメリットを3つの観点でお伝えいたします。
2.トラブルが起こる原因は?
ではいったいなぜこのようなトラブルが起こるのでしょうか。
ばねのトラブルはばねを使用している際に発生するのですが、その原因は「使用者側の問題」「製造元の問題」「経年劣化」の3つに分類することができます。
経年劣化については使用回数による製品寿命もあり、きっちりとした設計使い方をしていても起こりうる事象となりますので、ここではその他2つの問題についてみていきます。
使用者側の問題
使用者側の問題とは、ばねを選ぶ際に使用用途や使用環境に適さないものを選んでしまったり、またはばねを使用する際の使用方法に問題がある場合のことです。
使用用途に適さない例として、ばねには吸収できるエネルギーに限界があるにも関わらず、そのエネルギー量を数値化せずに経験則などで選んでしまい、結果的にばねが許容を上回るエネルギーを受けてしまい、破損してしまうということがあります。
使用方法に問題がある場合の例としては、設計などの問題から、小さなスペースに無理やりばねを設置してしまい、結果的にばねが他の部品と接触して破損したり、周りの部品を傷つけてしまうということがあります。
このように、ばねのトラブルが起こる原因には、使用者側のばねに関する知識不足や使用方法による場合があります。
製造元側の問題
製造元側の問題とは、使用者側は使用用途や環境に合った適切なものを選んでいるにも関わらず、製造元の製造過程に問題がある場合です。
製造過程に問題がある場合の例として、ばねを製造する際の熱処理や材料加工時の不具合などの問題があることがあります。熱処理は、ばねの形を安定させたり強度や耐久力を向上させ内部応力を除去するために行われますが、この処理が不十分だとばねは常に不要なエネルギーが内部に留まり続けてしまうため、動作不良を起こしたり破損の原因となってしまいます。
材料の問題では、そもそもばねが成型される以前に材料に異物が混入していたり、小さなキズが入っていたりして、結果的にばねの耐久性が落ちたり、ヒビ割れを生じさせてしまうということが考えられます。
ばねの加工工程においても様々な不具合の発生が考えられます。公差や加工痕などチェックする項目は多いので、製品とともに製造元への確認が必要となることもあると思います。
3.ばね選びの際に注意すべきポイント
ではこのようなトラブルを回避するために、ばねを選ぶ際どういった点に注意すればよいのでしょうか。
ばねのトラブルは製造元に落ち度があることもありますが、使用者がばねを選ぶ際にもトラブルの原因を作ってしまう可能性があるため、適切なばねを選べるよう以下の点をおさえておきましょう。
使用用途や使用環境を確認する!
ばねを注文する際には、まずはじめに使用用途や使用環境を明確にしましょう。
何故なら、ばねは材料や加工により得意なことや不得意なことが異なるため、もっとも適切なものを選ぶには、まず自分たちが使用する状態を明確化させる必要があるからです。
では、明確化しておくべき点として、ここではどのばねにも共通して言える基本的な明確化すべき項目をご紹介します。これらの項目が明確化できていれば、ばねを選ぶ際にも数値的に判断することができ、迷ったときにメーカーの方と相談する細にもスムーズに相談ができるようになります。
①ばねを取り付ける位置はどこでスペースはどれくらいあるか?
②どの様な環境でどれくらいの頻度で動作が行われるか?
③ばねにはどのくらいの荷重がかかるか?
適切な材料を確認する!
ばねの使用用途と環境が明確になったら、次はどの材料が適切かを確認しましょう。
何故なら、材料はばねの性能や耐久性を大きく左右する最も重要な要素だからです。
ばねの材料は金属・非金属とあり、金属と非金属の中にも多くの種類の材料が存在します。そのため、ここで全ての材料についてその特徴を説明することはできませんが、ここでは適切な材料を絞り込むための判断基準を紹介します。
なので、ばねを注文する際はここで紹介する判断基準に基づき要望を明確化させ、メーカーにそれを伝えて適切な材料で作られたばねを見つけましょう。
①予算はどれくらいか?
②どれくらいの重量を想定しているか?
③どれくらいの荷重を受けるか?
④どれくらいの温度下で使用されるか?
⑤使用する場所は腐食(サビ)し易い環境か?
⑥伝導性や絶縁性は必要か?
適切な加工を確認する!
材料が決まったら、次はどの加工処理が施されたものが適切かを確認しましょう。
加工処理も材料と同じくらい性能と耐久性に影響を与える重要な要素です。
ここでも全ての加工処理について説明することはできませんが、それらを絞り込むための判断基準をご紹介します。
①周りの部品との接触は想定されるか?
②どれくらいの頻度で動作が行われるか?
③どれくらいの温度下で使用されるか?
④見た目を綺麗にする必要はあるか?
⑤使用する場所は腐食(サビ)し易い環境か?
4.長く使える製品を作るために
これまでばねのトラブルについて、どの様なトラブルが起きやすく、それらの原因は何で、ばねを選ぶ際にはどこに気を付けるべきかを説明してきました。
先に説明したばねを選ぶ際のポイントに注意していただければ、ばねを選ぶ際には大きな失敗をする可能性は低くなりますが、それでも自分達で全てを調べて最適なばねを見つけるのが難しいければ、特注で作ってもらうというのもひとつの方法です。
自分たちで最適なばねを選ぶためには、ばねに関する知識もある程度知っておかなければなりませんが、特注であれば上記で紹介したこちらの要望を伝えるだけで、メーカーがそれにあった最適なばねを用意してくれるはずです。
また、もしばねのトラブルや選び方について疑問や不明点がある方は、いつでも御連絡いただければと思います。
貴社にあったばねについて、ご説明させていただければと思います。