【ファスナーばね選びのポイントを徹底解説!】具体的な使用事例もご紹介!

【ファスナーばね選びのポイントを徹底解説!】具体的な使用事例もご紹介!

 

今回は、使い方によって様々な効果を発揮する「ファスナーばね」をテーマに取り上げました。
ファスナーばねの概要から、種類と特性、製造の流れ、またファスナーばねを選ぶ際のポイントまで徹底解説いたします。
今回のコラムを通じて、皆様の中でファスナーばねについての理解が少しでも深まりましたら幸いです。

 

 

1.ファスナーばねとは?

 

「ファスナー」という言葉を聞くと、多くの方が「ジッパー、チャック」を想像するのではないでしょうか。
しかし工業用においてのファスナー(fastener)の意味としては、「留め具」や「締め具」を意味します。つまり、ファスナーばねとはばね作用を利用した締結部品の総称です。
そんなファスナーばねですが、大きく分けて3つの種類があるのでそちらをご紹介いたします。
座金(ワッシャー)
ナットとボルトを締め付ける際にナットの下にかませてこれらの固着具と部材との間のなじみをよくしたり、ナットの回転を防ぐために用いられます。
スプリングピン
位置決めや抜け止め、回転防止といった様々な場面で用いられます。ピンの形状や材質によってせん断力や特徴が変わるため、選定や使用方法には注意が必要です。
止め輪(リテーニングリング、サークリップ、スナップリング)
隣接した部品を固定する際に用いられます。部品1つあたりに必要な材料が少ないため製品全体の軽量化に役立っています

 

 

2.自動車製造において最も多く用いられているファスナーばね

ファスナーやファスナーばねは自動車に用いられている様々な配管類や内外装部品を固定するために利用されています。普段自動車に乗っていて、自動車内で使用されているファスナーばねを目にすることは難しいかもしれません。
ですが実は、平均して1台の自動車には100~200個ほどのファスナーが用いられているのです。
内装用

内装用としては、ドアや窓の開閉などを行う部分であるドアの内張り等に用いられています。ここでは外観性を重視するため、人目に映らない箇所に設定する隠しタイプのファスナーを使用しています。

また、脱着繰返し性に強みを持つ再使用タイプのファスナーは修理や部品交換の可能性のあるエンジンルーム内における部品の固定に用いられています。

外装用
外装用としては、ねじ締結の代替等としてファスナーが用いられています。
利用事例の一例を以下にご紹介いたします。
<利用事例>
・一方向から組み付ることのできる樹脂製ナット
・リアバンパーの固定部に利用するワッシャー
・モータースポーツのレギュレーションにおいて取り付けが義務付けられているロールゲージに利用するワッシャー
・相手部品に対して仮固定が可能な金属製ナット
車以外にも多種多様な分野において幅広く活用
自動車の他にも、以下のように様々な製品や部品の一部として役立っています。
<使用事例>
・住宅の引き戸
・リュックサックのバックル
・システムキッチンの引き出しをスムーズに開けるための部品
・パソコンのハードディスクを抑える部品
・プリント基板を補強する金具
・冷蔵庫の部品
このように日常生活において身近にある様々な部品の製造に役立っており、見えないところで我々の生活を支えています。金属板を打ち抜き、曲げ、加工をしただけのシンプルな構造ではありますが、部品としての機能を持つことによって車や家電には必要不可欠なものとなっています。

 

3.ファスナーばねを選ぶ際に見ていただきたいポイント

ファスナーばねには座金や止め輪、スプリングピンなど様々な種類が存在することは上記で説明したかと思います。その中でも、ばね座金を選ぶ際には使用時に平座金とセットで使用することを想定する必要があります。
「ばね座金のみ」の使用はNG
ばね座金と一緒に用いられる部品として、平座金(ワッシャー)があります。結論から言いますと、基本的にばね座金は、平座金とセットで使用しなければなりません。「ばね座金も平座金も”座金”という言葉がついているのだから同様の機能を持ち合わせているのでは?わざわざ平座金を入れるのは無駄じゃ…?」と思う方もいるかもしれません。そこで「ばね座金のみ」の使用がNGである理由についてご説明いたします。
①ばね座金のみの使用では、母材を損傷させてしまう
ばね座金のみを用いると、2つの理由から大切な母材を損傷させてしまう恐れがあります。一度損傷した面はナットやボルトが非常に緩みやすくなったり、腐食の原因となります。
②ばね座金の角部分は尖っている
ばね座金は平座金のような平らな形状ではなく、ドーナツ形状の一部分がカットされたC形をしており、このC形の角の部分が尖っているのです。ボルトに押しつぶされた際にはばね力を発揮するのですが、この時にばね座金の角の部分が母材へ食い込んでしまうのです。このことから、ばね座金のみでボルトを締め付けてしまうと母材が傷まみれになってしまうのです。だからこそ、平座金の上からばね座金を使用していればばね座金による食い込みを平座金が負担してくれます。
③ばね座金の外径が、平座金の外径と比べて小さい
実際に寸法をみれば分かるように、ばね座金の外径は平座金の外径よりも小さく作られているのです。同じ軸力で比較すると、軸力がかかっている面積が小さいほど母材へかかる応力が強くなるため、母材のへこみや陥没などを引き起こしやすくなります。平座金を用いることでこうした母材のへこみや陥没を防ぐことができます

二度と取り外しを行わないのであれば、NGではない

上述の通り、ばね座金のみを用いてボルトで母材と締結したときばね座金は母材に食い込んでいます。しかし、1回こっきりの締結であればばね座金が母材に食い込んでいることによって、ある程度は緩み止め効果を発揮いたします。

ただし、「組立と分解とを繰り返し行う場合」、「ボルトの締結位置を微調整しながら組み立てる場合」については母材の損傷した部分にナットやボルトを締め付けることになるため、ばね座金のみで使用するのはオススメしておりません。

 

4.  まとめ

今回のコラムではファスナーばねの概要から種類と特性、実際の使用事例、また選ぶ際のポイントまでご紹介いたしました。先述の通り、ファスナーばねには様々な種類があり我々の日常生活のおいて幅広く活用されています。