ばね用ステンレス鋼の磁性について

ばね用ステンレス鋼の磁性について

いつもご愛顧いただきありがとうございます。
今回は、『ばね用ステンレス鋼の磁性について』解説していきます。
どうぞお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

ステンレス鋼はすぐに錆びてしまう鉄材の代わりになるようにクロム(Cr)やニッケル(Ni)を添加したものとして開発され、家庭用品から工業用品まで幅広く使用されています。

ステンレス鋼といっても使用する用途によっていろいろな種類があり、ばね用ステンレス鋼線は「種類を示すSUS○○○」の文字のあとに「調質記号のWP○」が付き、汎用的なステンレス鋼と比べ硬い性質のものが使用されています。

(ステンレスは炭素の含有を問わずステンレス「鋼」と呼びます。)

ばね用ステンレス鋼線(SUS-WP○)

ばね用ステンレス鋼線は、中でも18-8ステンレスと呼ばれるSUS304を母材にしたSUS304WPBが幅広く使われています。

ステンレスのその名が示すとおりの「錆ない(錆びにくい)」という話題とは別に、ステンレス鋼でよく言われるもう一つの性質である「磁石につかない」という性質について、ばね用素材(線)の視点からお話します。

 

ステンレス材には、一般的に磁性体のものと、非磁性体のものがあります。

磁性体の種類としては、フェライト系・マルテンサイト系があります。

非磁性体としては、オーステナイト系があります。

SUS304はオーステナイト系のバネ用ステンレス鋼線の最も代表的なものです。

SUS300番台の中で最も使用されているSUS304を含め、オーステナイト系のステンレス鋼は一般的には「磁石につかない」非磁性体として知られていますが、ばね用の線材として高強度化される伸線過程(母材のSUS304を調質してWPBの線材として加工すること)で、内部結晶構造に変化が生じ、材料の一部分が結晶構造になって磁性を帯び「磁石につく」現象が生じます。

SUS316WPAのように冷間加工してもほとんど磁性がつかないステンレス鋼線もありますので「磁石につかない」ばね用素材の選択をしたい場合には一般的にSUS316WPAという鋼種を選ぶことになります。厳密に言えば「非磁性」ではありませんが、「磁石につかない」レベルでは十分使用可能です。

しかし最新の精密電子機器や精密電子医療部品、検針器等での磁界影響に対しては不十分です。

医療機器等で要求される「磁界(磁場)に影響しない」レベルになるとステンレス鋼以外か、メーカーの開発した超非磁性のステンレス鋼を選択することになります。

超非磁性のステンレス鋼についてはお問い合わせにてご確認ください。

ばね用ステンレス鋼帯(SUS-CSP)

板ばねには大きく分けて薄板ばねと重ね板ばねの2種類のばねがあり、細かく分類した場合、その種類の多さはコイルばね以上に多くあります。ひと昔前は銅が主流でしたが、現在では板ばねもステンレス素材が主となって使われています。

ステンレス系の薄板・板ばねにはSUS304-CSPが最もよく利用されています。

一般的にばね特性の低い順に1/2H,3/4H,Hと3段階で用途に応じて使用されています。

シムに使用する材料としてもSUS304-CSPが一般的で、SUS304-2B材に対し材料費はある程度高くなりますが、板厚精度が高いことから、ご指定の無い場合CSP材をご提案することが多いです。

また、SUS304 -CSPよりさらに高いばね特性を要する板ばねには、SUS301-CSPを使用することもあります。

SUS301-CSPはばね特性の低い順に1/2H,3/4H,H,EHと4段階で用途に応じて利用されています。

板厚等、メーカーの自主基準となるため一般入手できない板厚もありますのでお問い合わせにてご確認ください。

 

まとめ 

今回のコラムは『ばね用ステンレス鋼の磁性について』でしたが、いかがだったでしょうか。

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