【ばねの自作について】
いつもご愛顧いただき、ありがとうございます。
みなさまは急にばねが欲しくなったらどうしますか?
大多数の方はホームセンターやインターネットで探して購入するではないでしょうか?
合う仕様の製品がなければ、特注してくれるばね屋さんを問い合わせて探すところから始まります。
仕様が煮詰まっていなければ、一度試した後もいろいろ試さなくてはいけないかもしれません。
費用も時間もかかるし、中には手っ取り早く試しに自分で作りたいと思っている方がいるかもしれません。
今回は「自作」をテーマに書いてみようと思います。
えっ?ばねって自分で作れるの?と、興味を持たれる方、何事も経験!自分でばね製作してみたいと具体的に思われている方への参考になれば幸いです。
(もちろん弊社では、少量のばねの設計から製作・販売まで丁寧に応対させていただいていますので、気軽にご相談くださいね。)
以前掲載したコラムと重複する部分もありますが、併せてお読みいただければと思います。
・自分で作る試作ばね
・フッキングプライヤーを使った手加工でのフック起こし
ばねって自作できるの?
そもそもばねって自作できるの?と、思っている方もいるかと思います。可能か不可能かで答えるなら、可能です。
ですが、ばねの素材は一般的な鉄材に比べてかなり硬い鋼の素材です。
線径が太くなるほど人力での加工が困難になってくるのは道理ですので、適した道具がない状態で人の手で作れるもの、そうですねえ、線径2mm位までのものを反発に注意しながら「巻く」「曲げる」ことで作れるもののお話になります。
それでも自作するためには大きく分けて3つハードルがあるのではないでしょうか。
1つ目は、材料の手配
最初のハードルは材料の入手になるかと思います。
普通の鉄線は力を加えると曲がったまま元の状態には戻りませんので、元に戻ろうとする弾性を持った材料を選ぶことがとても重要になります。
ピアノ線・ばね用ステンレス鋼線などの一般よりも硬く弾性の強い材料が必要になります。
2つ目は、加工方法
ばねの加工はシンプルで、材料を丸棒に巻き付ければそれだけで形ができます。(丸棒を業界では芯金と呼びます)
作業としては材料を固定した丸棒に沿って巻き付けるだけの簡単な方法がありますが、整えて巻きつけることは難しくなりますので、巻数が多くなる場合や形にこだわったばねを作りたい場合は、材料を固定側にして丸棒を回転させて巻きつけるのがよいでしょう。(材料を固定側にすると材料の量も邪魔になりません)
ただし、芯金を回転させる方法、材料を芯金に固定する手段に一工夫が必要になりますのであしからず。
加工時の注意点としては、弾性のある材料は必ず元の形(直線)に戻ろうとするスプリングバックと呼ばれる症状が起きますので、巻き付けた量が多いときには手を離した勢いで怪我をしないようにしてください。
あと、コイルの仕上がり径そのものがスプリングバックの症状にバッチリ当てはまりますので、芯金の選択が重要になります。
3つ目は、熱処理
ばねは永久変形を起こさないで繰り返し弾性を機能させることが求められますが、ばねの加工では、相反して材料に永久変形が起こるまで負荷をかけた結果ということになります。
ですので、加工したままでは材料の最大性能は目減りした状態で、不完全な状態となります。
この不完全な状態を解消させる方法が低温焼きなましという熱処理になります。
熱処理には材料にあった適切な温度と時間があるので、正確に処理しようとすると一番高いハードルになるのではないでしょうか。
熱処理炉がない場合、完全再現は諦め、フライパンにばねを入れて豆を煎るようにしたり、ライターで炙る、オーブンを使って加熱する方法などがやりやすいかと思われます。(熱しすぎると素材自体がなまってしまうので注意してください。また、電子レンジは厳禁です!)
寸法変化がばねに出たようでしたら、暫定熱処理の完了です。(寸法変化は正常な変化です)
おまけ
自作するにしても完全再現のハードルはそこそこ高い気はします。
材料を購入にはロットが大きく(㎏単位)コストがかかりますし、整った形、きれいな寸法に仕上げるのは熟練度が必要なものです。
弊社ではそれでも自作の手助けができればと、材料の少量販売と、加工用に「ばね自作キット」もご用意しています。
シンプルでありながら、基本的なねじり・圧縮ばね・密着ばねの製作ができます。
また、上記のばね自作キットより太い線径に対応した上位機種として「ばね自作キットプロ」がございます。線径φ3.0まで対応しているため、より幅広く製作していただくことが可能です。
製作可能線径や使用方法の案内とともに動画を掲載していますので、是非ご覧いただき検討してみてください。ばね製作の楽しさを味わっていただけるかと思います。
板ばねって自作できるの?
続いては板ばねの自作ですが、基本的には上記のコイルばねと同じ要領です。
板ばねの場合はスプリングバックに注意すれば、ほぼプレス加工の道具で賄えますが、やはり硬度が高い状態での加工が基本ですので、穴あけやカットには注意が必要です。(後で硬度を入れる場合は熱処理が「焼入れ」となり、まず自作では処理不能となります。硬度があるバネ材SUS301CSPを使用した場合は、ドリルなどの一般工具では穴はあきません。)
ゼンマイばねって自作できるの?
板ばねの仲間でゼンマイばねを検討している方もいらっしゃるかと思います。
基本的には上記板ばねと同様になりますが、板厚が薄くても巻き付けには相当な力が必要になりますので、治工具がないと大変難しいです。
加工工程としては、巻始め部分を曲げるなどしてスリット入りの芯金等に引っ掛け、それを巻き付けて製作していきます。
さらに巻き終わり部分の加工をどのような形にするのかで難易度は変わってきます。
板厚が薄いものはペンチなどで曲げることも可能ですが、板厚が厚くなるほど曲げるにもハンドベンダーなどの治工具が必要となります。
また、板ばねやゼンマイの加工でも加工後の低温焼きなましが必要になります。
《まとめ》
いかがでしたか?
ばねを自作するのは治工具がないとかなり難しいですが、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
弊社ではばねの試作材として線材や板材の取り扱いもございます。
自作が難しい場合には、こんなばねを作ってほしいというご要望に、なにかしらお役に立てることがあるかと思います。
そんな時には是非、特注ばね即納.comの【お問い合わせ・お見積り】や【お問い合わせ~納品まで】から問い合わせができますので、是非ともご活用ください。