ばねの表面処理
鉄製のばねには、その製品の性能を保つ為、また耐摩耗性の向上、耐久力の向上、美観など
様々な目的に合わせて表面処理を施すことが多いです。
ここでは、ばねに施すことのできる表面処理と、その特徴などを簡単に紹介いたします。
目次
防錆油塗布
ピアノ線・鋼硬線のばねなどに、弊社指定の防錆用の油を塗布する処理方法です。
黒染め処理などを施した後にも防錆の為に塗布することがほとんどです。
油が乾いてしまったり、擦れたりした場合、錆が発生する可能性は高いです。
機械内部や、潤滑油を常につけるような場所での使用ならば最も安価な処理方法で使い勝手は良いです。
黒染め
表面を酸化被皮膜で覆うことにより、黒くし、防錆力を出す処理です。
この酸化被膜に油分が浸透することにより、ただ防錆油を塗布しただけの場合に比べ油の乾きを抑え、防錆力を長く維持することができます。
ただしメッキなどに比べると防錆力は大きく劣ります。
メッキと比べ安価であるため、多少の防錆力があれば問題ない場合などは重宝されている処理方法になります。
亜鉛メッキ(電気亜鉛メッキ・溶融亜鉛メッキ)
一般的に広く普及しているメッキ処理です。
ほとんどの場合、クロメート処理と合わせて行われることが多いです。
3価クロメート・6価クロメート・ユニクロメッキなどがあり、3価クロメート以外はRoHS規制対象の6価クロムを含有しています。
よって、現在は3価クロメート処理を施されたものが多い。有色(黒・黄色)の処理もあります。
安価で防錆力もそこそこあるが、色ムラが出る時もある。3価メッキ・6価メッキ・3価黒・6価黒・3価黄色・6価黄色・ユニクロメッキなどと依頼されることが多い。
ニッケルメッキ(電解ニッケル・無電解ニッケル)
耐食性に優れ、美観もそこそこ備えたメッキです。
亜鉛メッキと比べると多少高価ではありますが、表面硬度が上がる為、亜鉛メッキと比べると耐摩耗性にも優れます。
鉄系の素材だけでなく、下地処理を行うことでステンレス材にも施すことができます。
はんだ付けをしたい場合や、通電性を良くする場合などにも用いられている処理方法です。
クロムメッキ(硬質クロム・装飾用クロム)
耐久性に優れ、硬く耐候性にも優れたメッキです。
硬質クロムのほうは非常に硬く耐摩耗性にも優れているものの、メッキ膜厚の均一性に難があります。
装飾用クロムは美観のある仕上がりと、硬質クロムほどではないが硬い仕上がりのメッキで下地処理にニッケルや銅を使います。
両処理ともに、電極の治具痕がつく場合があります。
金メッキ(金フラッシュメッキ)
耐久性に優れ、電気伝導性が高く、はんだ付けにも適した処理です。また、ボンディング性が高く、耐食性も備えています。
ただし、処理内容もあるが、面積あたりに金価格がついてくるため非常に高価となる場合が多いです。
そのため細かい部品に施すことは多いが、大きなバネにはあまり用いられていないです。
その美観から装飾用メッキとしても多く用いられています。
塗装(電着塗装・エナメル塗装など)
オイルテンパー線などは、メッキ処理を行うと、水素脆性の可能性が高くなる為、塗装処理を行います。
塗料により、様々な色目を出すことはできるものの、膜厚が高すぎると剥がれなどの可能性もあります。耐食性はまずますです。
装飾用としても処理可能ですが、あまり細い線には処理していないです。
電解研磨(電気化学研磨)
ステンレスのばねを美観目的で表面仕上げをするときに用いる手法です。表面に光沢を出すだけでなく、耐食性もあがります。
処理時間の管理などが物によって変わる為、試作による確認を行わないとくすんだ色目が残ることや、表面がかえって荒れてしまう場合があります。
協力会社様の協力のもと、上記のように様々なご依頼にお答えできますが、ここに挙げた処理以外にも、
ショットピーニングによる、耐久性の向上やバリ取り、また、特殊な表面処理などもご相談いただければと思います!