ISO13485の認証取得
いつもご愛読いただきありがとうございます。
この度沢根スプリングは医療機器の品質マネジメントシステムISO13485の認証を取得しました。
適用範囲は、当社本社工場における指定の医療機器部品製造ラインに限っております。
当社のISO取得のあゆみから貴社のISOへの取り組みの参考にしていただければ幸いです。
1.当社のISOの歴史
当社のISOの歴史は、1997年(平成9年)から当時の品質マネジメントシステムISO9002:1994版を認証取得したところからスタートします。当時はまだ取得する企業も少なかったように思います。当社のお取引先や同業のばねメーカーをみても取得されている企業はあまりありませんでした。浜松の「やらまいか」精神の表れかもしれません。
その後2000年(平成12年)に環境マネジメントシステムのISO14001を認証取得しました。
私自身も勉強しISOの審査員資格も一時取得しましたが、その維持費と審査経験等を求められることから途中で資格を放棄しました。
品質と環境の2つのISOですが、これまで審査機関の変更をしてきました。最初は日本の審査機関、次にアメリカの審査機関、そしてヨーロッパの審査機関と契約を変更してきました。国際規格ですので要求事項や審査方法などに大きな違いはありませんが、会社でもいろいろな会社があるように、審査費用や審査員の質などは随分違いを感じてきました。
審査に合格することが目的ではありません。当初はそうであったかもしれませんが。認証取得が経営に役立つものでなければならないといつも考えていました。審査機関の指摘に振り回され、文書を変えたり戻したりということもありました。
現在では品質も環境、どちらのISOも自己適合宣言で運用しています。自己適合宣言とは、ISOを返上して自らISOに基づくマネジメントシステムを構築・運用・適合していることを宣言することです。ISO14001:2015の序文にはっきりと自己宣言が選択肢として明記されています。そこで当社は2005年(平成17年)に環境ISOを、2013年(平成25年)に品質ISOを自己適合宣言に移行しました。やっていることは以前と全く変わりません。適合審査は審査資格を持つ第三者機関(当社ではNPO法人SDC検証審査協会)にお願いし受審しています。静岡県では自己適合宣言第一号と伺いました。今では大企業もこの自己適合宣言で運用している会社もあります。移行するメリットは費用的にも安くなったり、実務に即した自主的な取り組みができるようになりました。
2.ISO13485認証取得へのきっかけ
当社の製造したばね部品の多くは、自動車などの輸送機器関連先が主体でした。時代と共に経営環境も変わり、自動車部品のような量産リピート品だけでなく、ばねの標準品や小口スポット品の領域も多くなりました。
結果としてお取引先の業種も多岐に渡り、輸送機器や電気機器、機械設備、医療機器、健康福祉、ロボット、航空宇宙などとご縁ができました。
販売先の地域も国内だけでなく、海外にも直接販売するようになりました。医療機器関連のお客様も増え、医療関連の部品も少しずつ増えてきました。
国内だけでなくアメリカやドイツで開催される医療の展示会にも6年前から継続して出展を重ねています。今では医療機器に使用されるばねの量産部品も海外からご注文をいただけるようになりました。
今後この市場での拡大を目指そうと、医療機器の品質マネジメントシステムというもう一段高いレベルつまり、リスクマネジメントや法的監査における適合性、フィードバックと有効性維持のしくみを構築し、今後取り入れて行く付加価値の高い部品供給に寄与したいと考えました。
3.認証取得までの経緯
認証取得まではいくつかのステップを踏んで進めてきました。
概略は次のとおりです。
① 準備段階 ISO13485の情報収集、推進組織の設置、審査機関の選定
② 境域段階 ISO13485の理解、内部監査員の養成・選任
③ 文書構築段階 品質方針・品質マニュアル・社内規程・手順書の文書化
④ 運用改善段階 運用実施、内部監査、是正作業、現場改善、マネジメントレビュー
⑤ 審査段階 審査機関への受審申請、書面審査、第一段階審査、第二段階審査、認証
あまり詳しくは申し上げられませんが、認証取得まで当初の1年計画がコロナの影響を受け、1年半に延びてしまいました。
ISO13485の独自の新しい言葉があったり、規格の理解もISO9001との違いも多く、随分苦労しました。昨年8月に品質マニュアル初版を完成させ、その後11月までに4回の改訂を経て、本審査に臨みました。この期間に15の規程や手順書、63の様式(品質や環境との共用を含む)を準備しました。
審査は2日間で行われ1件の軽微な不適合がありましたが、不適合事案を改善し12月に登録証が会社に届きました。
審査機関の選定については、今回お世話になったコンサルタント((株)アイソコンサルティング)から情報を参考にして見積りをとり決定しました。審査費用は今後も継続的に発生するものですので審査機関決定の大きな要素となりました。現状のISO9001やISO14001と比べると審査費用は高いといわざるを得ません。
4. 認証取得による変化
認証取得をしてもすぐに医療機器の仕事が多くなるわけではありません。
ましてや適用範囲を限定しているので、その業界のメーカーにはPRでき、海外からの注文も偶然かもしれませんが、多く飛び込んできました。なんと当社の生産能力の数倍の見積り依頼もいただきました。
今後は対象範囲を広げ、研究開発している部品にも拡大し、その部品領域での市場獲得を目指したいと考えています。
これまでのシステム構築活動をとおして、現行のISO9001の理解がより深まったとの推進メンバーの声もありました。また一方でISO9001:2015版でのプロセスフローチャート化の見直しが進んだことも大きな副効果だと考えています。