若手社員奮闘記vol.2 ~小ロットの薄板ばねの製作~

若手社員奮闘記~小ロットの薄板ばねの製作~

いつもご愛読いただきありがとうございます。

このコラムでは、ばね会社に入社して2年目になる私「伊藤」が経験した体験談をともに【ばね】についてのあれこれを知識が無い方でも分かるようにお話していけたらと思います!

2回目となる今回は【板ばねの製作】(簡単な)です。

 

 

1.薄板ばねの製作

板ばねにも様々な種類がありますが今回は10個以下の手加工で製作する薄板ばねについて詳しく話していきたいと思います。

最初に、ばねは聞いたことあるけど板ばねってどんなものだろう?と思う方もいるかも知れません。

皆さんが「ばね」と聞いて想像するのは、線材を螺旋状に巻いた圧縮ばねや線材を密着させて巻きつけ両側にフックの付いた引張ばねと呼ばれるものだと思います。

板ばねというのは鋼板を曲げることによって発生する、金属が元の形へ戻ろうとする性質を利用したばねのことを言います。板ばねにも様々な形状や材質があり、今回お話する薄板ばねは平たく帯状のばね用ステンレス鋼帯と呼ばれる材料に穴を開けたり曲げたりして加工した製品についてとなります。

基本的な加工手順は、材料の切断→穴あけ→曲げ加工→熱処理の4工程になります。

2.薄板ばねの製作工程

1工程目の材料の切断では、お客様の指定した板厚、板幅の材料を必要な全長に切り出します。材料を切り出す際、弊社ではケトバシとい機械を使って材料を切り出しています。(一部電動プレスも使いますが今回は触れません)
2工程目では、切り出した材料をお客様の指定した寸法に穴を開けます。ここでもケトバシを使って加工します。開ける穴の経は標準で0.5mm刻みのパンチと呼ばれる金型を使い開けます。
3工程目では、お客様指定の位置と角度で板を曲げます。製品を曲げる際には、エキセンプレス(手廻プレス)を使います。この際にも、標準の位置決めツールや曲げ治具を使用します。
4工程目では、今まで加工してきたものを熱処理していきます。熱処理することで、金属が加工される前の形に戻ろうとする応力を取り除き寸法が安定したりへたりにくくなったりします。
以上が基本的な薄板ばねの製作方法ですが、ここまで度々出てきた薄板ばねの手加工製作でよく使う機械「ケトバシ」「エキセンプレス」について少し説明したいと思います。

3.薄板ばねの製作で使う機械

ケトバシという機械は、名称通り自分の足でペダルを蹴飛ばすことで取り付けた金型の寸法通りに材料を切断・穴あけ・折曲げ加工する機械で、人間ならではの微妙な力加減で細かな加工にとても向いています。

ですが、「言うは易く行うは難し」とはこのことで、初めて使った時に私はこの微妙な力加減と言うのを一定に続けることに大変苦戦しました。これはカットだけではなく穴あけにも言えるのですが、材料の厚さによって適した力加減で加工しなければ治具が傷んでしまうということがあります。

また傷んだままの治具で製品の加工をすると、バリと呼ばれる金属のささくれのようなものができてしまうことがあります。これによりお客様が怪我などをしてしまう可能性もあるので手加工での作業は大変気を使います!

もう一つのエキセンプレス(手廻プレス)という機械は、基本的にはケトバシと同じ切断・穴あけ・折曲げに使える機械ですが弊社ではより小さく細かい作業に使います。このような製造工程を経て製品は作られています。ケトバシとエキセンプレスは、電気がなくても加工できる究極の省エネマシンとも言えます。

こうして作られた製品は前回のコラムで紹介した検査工程へと進みます。

以上が小ロット品の手加工による【板ばねの製作】のお話になります。実際にはもう少し細かな製造に関わる手順などがあるのですが今回はここまでとさせていただきます。