《ばねの端面研削について》
いつもご愛顧いただきありがとうございます。
今回はばねの研削をテーマに取り上げてみようと思います。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
《「研削」と「研磨」の違いについて》
身近なもので“研ぐ”といえば、例えば包丁。
切れ味が悪くなった包丁は使い勝手が悪いため、丸まってしまった刃先を鋭く仕上げ直す動作がイメージしやすいですよね。
ばねの製造過程にも“研ぐ”という字を使う工程があります。
主に圧縮ばねの製造工程になりますが、“研ぐ”という字と“削る”や“磨く”という二文字を組み合わせた「研削」や「研磨」という熟語で工程が呼ばれます。
呼ばれ方が二通りになってしまうのは、工程自体は「研削」でありつつも、求められる機能が「研磨」として扱われるためです。
まずは「研削」と「研磨」の違いについて、そこから確認しましょう。
「研削」
高速回転する砥石や超砥粒ホイールなどを使って材料表面を削り取り、主に寸法や形状を仕上げていく作業になります。「研磨」と比べると、
・材料の表面を比較的大きく削り取るのが特徴と言えます。
・表面の仕上がりは砥粒に左右され、「研磨」より粗くなるのが一般的です。
「研磨」
主に表面状態の最終仕上げや微細な凹凸や傷を取り除き、表面を滑らかにし、美観や機能性を向上させる作業になります。「研削」と比べると、
・微細な削り取りで寸法への影響は少ない。
・表面の凸凹を整え、「研削」よりも表面が滑らかになるのが一般的です。
混同して使われがちですが、それぞれ違う意味として定義されています。
両者は目的や材料の削り量、表面の仕上がり具合が異なりますが、製造工程においては互いに補完的な役割を果たすことが多いです。
《ばねの端面研削/研磨》
ばねの端面研削/研磨は圧縮ばねのコイル部の端面部(座巻)を平面研削/研磨することを意味します。(稀に密着ばねの端面研削/研磨もありますが)
コイル部端面を研削/研磨する目的は、次のようなものが挙げられます。
・寸法精度を高め、使用時の特性精度を高める(研削)
・直角度を良くし、荷重の偏心・座屈を防ぐ(研削/研磨)
・密着寸法の減少(研削)
・座りを良くし、相手部品への摩擦損傷を防ぐ(研磨)
一般的に、線径1mm以下でばね指数が10を超えるばねは、研削/研磨しなくても問題なく使用できるとされています。
線径1mm以下のばねは相手部品への摩擦損傷も少なく、反面、研削しようとすると「研削」の特性上、線自体が元の形状を保てないようなトルクがばねにかかり、変形など加工上の不具合が起きやすい為、密着長さを気にしない場面では研削無しを選択することが多いです。(近年では製品の小型化などもあり端面研削を必要とするケースが増えてきてはいます)
ここで「研削」と「研磨」の話しに戻り、作用が違う前提で内容を進めてきましたが、実はばねの「研削」と「研磨」の工程は一つのくくりで同じものになります。
砥石や超砥粒ホイールに挟まれた隙間にばねを通すことで「研削」作業を行いますが、固定砥粒であるため、寸法を確保した後しばらく砥石内を通過するだけになり、その時の設備振動等で「研磨」作用を作り出しています。
ばねの「研磨」面は一般的な上仕上げ~並仕上げ(▽▽▽下目~▽▽)くらいになります。
《どのくらい研削できるの?》
端面研削については、JISで次のように規定されています。
『ばねに端面研削を行う場合は、研削部長さは約3/4巻、先端厚さは材料の直径約1/4とする(JIS B 2704)』
特に指定がない場合これを基準にしますが、ただ、メーカーによってはこの限りではないので注意が必要です。
端面3/4巻ずつ削り、両側で1.5線径分の密着高さを削減できる設計を見込まれるかもしれませんが、先程の研削機の特性上の問題や、ばね形状そのものの影響で計算通りの削り量にならないことが多くあります。(厚く残り、密着高さは見込みより減りません)
どうしても密着高さが必要な場合は、使用環境上の特別な指示として作図に盛り込むのが良いと思われます。
《まとめ》
いかがだったでしょうか?
精度を求められることが多い近年は、ばねの端面研削に関するご要望も増えております。
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