ばね材料の比較

ばね材料の比較

いつもご愛顧いただきありがとうございます。
今回は、ばね材の代表的でもある『ピアノ線とばね用ステンレス鋼線』をいろいろな角度から比較してみたいと思います。
外観

先ず外観から見てみましょう。加工・熱処理前の材料は、ピアノ線が黒に近い灰色、ばね用ステンレス鋼線は白っぽい灰色をしています。材料は表面の色で判別することは難しいと考えたほうが良いでしょう。

良く使う判別方法としては、磁石を近づけてみる方法です。表面の色と併用して判断すると良いでしょう。しかしこの方法も、ばね用ステンレス鋼線がまったくの非磁性ではないので、注意が必要です。

標準線径

JIS規格で、ピアノ線とばね用ステンレス鋼線の標準線径は、ほぼ同じような寸法で推移しています。ちなみに細い線径は0.080 0.1 0.12 0.14等々

ピアノ線の最大線径は10m、ばね用ステンレス鋼線の最大線径は12mmとなっています。但し、鋼種によっても多少異なりますので確認が必要でしょう。また世の中での流通などから手に入りにくい線径もありますので、確認が必要でしょう。

 

引張強さ

ピアノ線とばね用ステンレス鋼線の引張強さを比較してみましょう。線径1mmの場合ピアノ線(SWP-A)の引張強さは2060~2260N/㎟ばね用ステンレス鋼線(SUS304WPB)の1850~2100N/㎟線径4mmの場合ピアノ線(SWP-A)の引張強さは1670~1810N/㎟ばね用ステンレス鋼線(SUS304WPB)の1450~1700N/㎟上記の事から、ピアノ線の方が引張強さが高いことがわかると思います。つまり引張強さが高いということは、許容応力の限界が高いと言えます。補足になりますが、弾性係数がピアノ線の方がばね用ステンレス鋼線に比べて高いです。

成形後の熱処理温度

一般的にピアノ線もばね用ステンレス鋼線も成形後、低温焼鈍という熱処理をします。熱処理の温度は線径や大きさなどで多少異なりますがピアノ線の場合300°C~350°Cばね用ステンレス鋼線の場合350°C~400°Cになります。

 

熱処理後の変化

熱処理後お変化をリングで比較してみましょう。

線径1mm外径26mmのリングで熱処理前、熱処理後を比較してみました。熱処理温度と時間はピアノ線が300°C×20分、ばね用ステンレス鋼線が350°C×20分です

 

結果はピアノ線が外径24.8mmになり、ばね用ステンレス鋼線が27.5mmになりました。上記の事からも分かるように、ピアノ線が小さくなり、ばね用ステンレス鋼線は大きくなります。その比率は線径の太さと外径の大きさによって異なります。

耐熱温度

耐熱温度で高い方はピアノ線が120°C、ばね用ステンレス鋼線が250°Cになります。

低い方の温度は、どちらも約-50°Cとされています。

耐食性

ピアノ線とばね用ステンレス鋼線の耐食性は皆さんもご存知の通り、ばね用ステンレス鋼線の方に耐食性があります。ではどのくらいの耐食性があるのか、実験してみました。

テスト用のばねは、表面の油分を取り雨があたらない屋外の大気中に放置しました。

結果、ピアノ線は5日後に表面に薄っすら錆が発生、15日後には全体的に錆が広がり、30日後には全体的に錆が発生。一方、ステンレス鋼線に関しては、30日後も変化はありませんでした。

まとめ 

ピアノ線に関しては、鉄系の素材となる為、当然錆が発生します。

耐食性を要する場合、ステンレス鋼線の使用、あるいはメッキ・塗装などの表面処理を施すことをお勧めします。

今回、ピアノ線とステンレス鋼線の比較をしてみましたが、それぞれ特徴があることが分かったと思います。

・コスト面を考慮する場合、ピアノ線 >ステンレス鋼線

・強さ(耐久性)を必要とする場合、ピアノ線 >ステンレス鋼線

・耐食性、耐熱性を必要とする場合、ピアノ線 <ステンレス鋼線・・・など

ピアノ線・ステンレス鋼線と大きなくくりでお話させて頂きましたが、ピアノ線にしてもステンレス鋼線にしても種類(グレード)があります。また、ばね材自体、他にも種類が有り、それぞれ特徴がある為、次回お話したいと思います。

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