【渦巻ばね選びのポイントを徹底解説!】具体的な使用事例もご紹介!
今回は、私たちの生活の中で知らず知らずのうちに使われている「渦巻ばね」について、渦巻ばねの概要から、種類と特性、実際の使用事例まで徹底解説いたします。
今回のコラムを通じて、皆様の中で渦巻ばねについての理解が少しでも深まりましたら幸いです。
1.渦巻ばねとは?
渦巻ばねについて、まずは概要からお伝えいたします。
ズバリ、渦巻ばねとは帯状の材料を渦巻の形に巻いたばね、のことです。
その形がとある山菜の新芽に似ていることから、ぜんまいばね、とも呼ばれます。
渦巻ばねの歴史は長く、1511年ごろにドイツ・ニュルンベルクのピーターヘンラインという時計職人が発明したことが起源だとされています。
渦巻ばねは日本でも昔から活用されており、なんと江戸時代にはクジラのヒゲを使った渦巻ばねが存在していたようです。
そんな渦巻ばねの原理はというと、巻いたばねを引っ張った時にばねが元に戻ろうとして生じる回転の力が動力源です。
渦巻ばねは、帯状の材料をまくだけでできる簡単さと、巻けば巻くほどに大きなエネルギーを貯めることができるという2点が特徴のばねといえます。
2.渦巻ばねの種類と特性
渦巻ばねは、材料を巻くというシンプルな工程で作成できる上に大きなエネルギーをためることもできるため、コストパフォーマンスの良さが特徴のばねだといえます。
そんなコスパの良い渦巻ばねですが、ばねの巻き方によって接触型と非接触型という2種類に分けられます。
では早速、その2種類についてそれぞれどんな特性があるのかをご紹介しますね。
〇接触型渦巻ばね
接触型渦巻ばねとは、巻かれたばね同士が触れ合っている状態の渦巻ばねを指します。
ばね同士が触れ合うくらいきつくばねをまくため、より多くのエネルギーをためることができると言う点がが強みです。
一方で、ばね同士が接触することで摩擦が生じて、エネルギーの損失が生じてしまうという懸念点があります。
一口に接触型渦巻きばねといっても、S字ぜんまい・定トルクぜんまい・定荷重ぜんまい・コンベックスなど種類が数多く存在しています。
〇非接触型渦巻ばね
接触型とは異なり、巻かれたばね同士が触れ合っていない状態の渦巻ばねのことを非接触型渦巻ばねと言います。
非接触型渦巻きばねは、ばね同士が接触しない分、巻き数が減ってばねに貯めることが出来るエネルギーは小さくなります。
しかし、ばね同士の接触による摩擦が起こらないのでエネルギーの損失もなくなり、一定の力でばねの力を発揮することができるという良さがあります。
あまりメジャーではありませんが、髪の毛よりも細い材料で作られるひげぜんまいなどは非接触型渦巻きばねの一種です。
このように渦巻ばねは、巻かれたばね同士が触れ合っているかどうかという違いによって2つの種類に分かれるのです。
3.実際の使用事例
渦巻ばねは巻き方の違いによって「接触型」「非接触型」の2種類に分かれる、ということをお伝えしました。
接触型渦巻きばねと非接触型渦巻きばねは先ほど説明したように特性が違うため、用途ももちろん違います。
では、それぞれの渦巻きばねの使用事例について、ご紹介しますね。
〇接触型渦巻ばね
接触型渦巻ばねは、長期間ばねの特性を発揮したいときに使用されます。
先ほど説明したように、接触型渦巻ばねはばね同士が触れ合うほど強くばねを巻くため、多くの回転数を確保できます。
ここで回転数とは、どれだけばねをまくことができるかという巻き数を指し、巻き数が多ければ多いほど多くの力をばねに貯めることができるといえます。
従って、接触型渦巻ばねは回転数を多く確保できるため、多くの力を貯め長期間ばねの力を発揮したいというときに使用されるのです。
具体的には、自動車のシートベルトの巻取り装置や長時間作動するオルゴールなど、多くの力をため長期間ばね特性を発揮したい場合に使用されています。
〇非接触型渦巻ばね
一方の非接触型巻きばねは、一定の力でばねの特性を発揮したいときに使用されます。
なぜなら非接触型渦巻ばねは、ばね同士が触れ合わないよう巻かれており、接触がなく摩擦によるエネルギーの損失が少ないという特徴を持つためです。
非接触型渦巻ばねはエネルギーの損失が生じずらいため、ばねが一定のばね特性を発揮できるということですね。
具体的な使用例としては、自動車のリクライニングシートや機械式時計で速度調整のために使われるテンプという部品などが挙げられます。
以上のように渦巻ばねは、ばね特性を長期間発揮させたいか、一定の力で発揮させたいかという違いで使い分けられてるのです。。
4. 渦巻ばねを選ぶ際に見ていただきたいポイント
さて、渦巻ばねの「概要」「種類と特性」「実際の使用事例」をお伝えしてきましたが、渦巻ばねについての理解は深まりましたでしょうか。
ここまでコラムをお読みいただいた方の中には、
『実際に渦巻ばねを使ってみたいけど、選ぶときのポイントはあるのかな』
と感じている方がいらっしゃるかと存じます。
そこで、このコラムの結びとして、渦巻ばねを選ぶ際に確認していただきたい2つのポイントを最後にお伝えしたいと思います。
ポイント① 接触型か非接触型か
渦巻ばねを選ぶ際に確認していただきたいポイントの1つ目は、渦巻ばねを利用する目的です。
3章で説明したように、渦巻ばねは接触型と非接触型で発揮される効果が変わるためです。
渦巻ばねを使用するにあたっては、長期間ばね特性を発揮させるためなのか、一定のばね特性を発揮させるためなのか、という目的を明確にして使用するばねを選ぶことが重要です。
ポイント② 渦巻ばねの材料
渦巻ばねを選ぶ際に確認していただきたいポイントの2つ目は、渦巻ばねの材料に何が使われているかという点です。
なぜなら、渦巻ばねは材料によって形状が変わってしまうためです。
渦巻ばねに限らず一般的な材料でばねを作成する際には、加工後にばねが元の形に戻ってしまうスプリングバックと呼ばれる現象が起こります。
スプリングバックが生じると渦巻ばねの半径が大きくなり、小さなスペースで利用することが出来なくなってしまいます。
特殊材と呼ばれる材料を使った渦巻ばねはスプリングバックが生じづらいため、小さな渦巻ばねを作りたい場合は材料に注目するとよいでしょう。
5. まとめ
今回は、ばねの中でも私たちの日常生活に身近な存在である渦巻ばねについて解説してきました。
お伝えしたように、渦巻ばねは巻き方によって2つの種類に分かれ、発揮するばね特性も変わります。
従って、渦巻ばねの活用に不安がある方は、製造業者に直接問い合わせて自社のニーズをすり合わせながら特注するという選択肢を取ることをおすすめいたします。